バスク州ビトリアに飾られたベレン

スペインの、特に見ごたえのあるベレン(キリスト降誕の場面)

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人々がとりわけ楽しみにしているクリスマスの行事といえば、間違いなく、スペインの多くの都市に飾られる見事なベレン(キリスト降誕の場面)を鑑賞することでしょう。歴史的・芸術的価値の高い人形を展示するものから記念碑的なサイズのものまでバラエティにあふれており、なかには砂やチョコレートなど、考えられないような素材で制作した創造性あふれる作品もあります。一方、この時期に開催される魅力的な「人間ベレン」を見に行くという選択肢もあります。以下、傑作とされるベレンをいくつかご紹介します。とはいえ、スペイン国内であればほぼ場所を問わず、スペインが誇るこのクリスマスの伝統をさまざまな角度から楽しむことができます。

  • 王宮に飾られたベレン

    ナポリ様式のベレン(マドリード、ムルシアおよびバジャドリ)

    スペインには真の至宝、すなわち、バロック芸術の一ジャンルであるナポリ様式のベレンがあります。王宮には、ナポリ、ジェノバ、スペインそれぞれの様式で作られた人形(18世紀から21世紀までのもの)が200点近く展示されるほか、新しい要素や場面が毎年追加されるため、訪れるたびに前回とは異なるベレンに遭遇します。ムルシアのサルシージョ美術館では、世界有数の貴重なナポリ風ベレンを見学することができます。細かい彫刻を施された、素焼き、塗装された木材、粘土などの置物で構成されています。サルシージョ作のベレンを見学することもおすすめです。スペイン様式で作られたこちらのベレンは常設コレクションに含まれています。クリスマスの時期にバジャドリの国立彫刻美術館を訪れ、18世紀のナポリの社会が見事に再現されている様子を鑑賞することは、それが一年を通して見ることができるものとはいえ、やはり格別の経験です。ヨーロッパを代表する、この貴重なベレンは、600体を超える小さな人形で構成されています。

  • グラン・カナリア島の砂のベレン

    砂のベレン(グラン・カナリア島)

    2006年以降毎年、国内外の著名な砂の彫刻家8名が協力して、息をのむようなベレンを形作る作業に取り組みます。作品が設置されるのは、ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア(カナリア諸島州)のラス・カンテラス・ビーチです。この砂のベレンは本格的な屋外ショーであるとともに、集められた寄付が社会事業に使われるという点で、宗教的・芸術的動機に加え慈善的な目的をも有したイベントとなっています。

  • アリカンテの巨大なベレン

    記念碑的なベレン(サラゴサ、バレンシアおよびアリカンテ)

    サラゴサの記念碑的なベレンは大勢の人でにぎわうピラール広場に設置され、その占有面積はおよそ1,500平方メートルに及びます。等身大の人形が100体ほど並び、夜になると後ろにそびえるバシリカ教会堂がきらびやかなイルミネーションで彩られます。ほかにも大型のベレンが飾られますが、それらはバレンシアのファジャス(火祭り)の人形に着想を得たものとなっています。高さが17メートルもあるアリカンテの巨大なベレンは2019年にギネスブックに登録されています。このベレンを構成するのは、幼子イエス、マリア、ヨセフおよび東方の三賢者の像です。もうひとつの好例は、バレンシア県シャティバ記念碑的なベレンです。等身大の人形、生きた動物、新鮮な農産物、小さな池や井戸があるおかげで、こうした再現された場面の真実味が増しています。

  • ルテ(コルドバ県)のチョコレート製ベレン

    約1,600キロのチョコレートを使用し、6か月あまりにわたる作業を経て完成するベレンをひと目見ようと、年を追うごとにますます多くの見学者が集まるようになりました。今から1世紀ほど前のこと、コルドバ県スブベティカス山脈自然公園内にある小さな村で、ある家族経営の会社がチョコレート製のベレンを考案したのがはじまりです。今のところ世界最大の規模を誇るチョコレート製ベレンだとされています。このベレンは2023年10月9日から2024年1月5日まで公開されています。

  • ジローナ県ラ・ガロッチャの人間ベレン

    農村環境での人間ベレン(カタルーニャ州)

    村のなかには、人間ベレン特有の演劇性を楽しむのにふさわしい場所だといえる村がいくつか存在します。多くの場合、その村の住民が俳優や女優といった配役を自ら務めます。特に伝統ある地域のひとつ、カタルーニャ州では、次のような人間ベレンが実施されます。クルベーラ・ダ・リュブラガートの人間ベレンは12月2日から1月13日まで開催され、700メートルのコースを語り部に導かれながら森や川に沿って進んでいきます。サンタ・パウの人間ベレンは、ガロッチャの火山地区自然公園の中心部にあり、かつ石畳の通りを擁する中世の村サンタ・パウで行われます。コスタ・ブラバに面した観光が盛んな自治体、プラッチャ・ダロに隣接するカステル・ダロの人間ベレンは、1959年以降受け継がれているものです。

  • セビージャのベレン市

    ベレン市(セビージャ)

    最後になりますが、来年のクリスマスにオリジナルのベレンを飾りたいとお考えなら、ひらめきを得たり必要なものを買いそろえたりするのに最適なのが「ベレン市」です。この市はセビージャ大聖堂インディアス古文書館のそばに設営されます。クリスマスのキリスト降誕場面に必要な、あらゆる種類の魅力的な人形や置物、小物を扱ったり作成したりすることが専門の業者や職人にとって、この市は国内随一の位置を占めるものです。2023年10月28日から12月23日にかけて出店する20軒あまりのブースを見て回り、ミニチュアサイズの工芸品を手に入れれば、個性的なベレンを飾ることも特別な贈り物を用意することもできるでしょう。

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