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オレンジ

東部

スペイン東部は、こうして楽しむことができます。

焼きたてのパンから海辺に漂う潮まで、さまざまな香りを通して。石や水、色鮮やかな陶器を照らす光を通して。波や風、そして絶えず動き続ける街から生まれる音を通して。

ウエスカ・プラネタリウム

指先で太陽系の惑星に触れることで、質感や立体感を通して、果てしなく広がる宇宙の壮大さを感じることができます。ウエスカ・プラネタリウムでは、天体に直接触れながら、宇宙への探求をより身近に楽しめます。

子どもの小さな手が、太陽系のスケールモデルの金属製の棒に、色を塗った小さな球体をはめ込んでいます。そばには、表面にさまざまな質感が施された惑星が並び、ひときわ目を引く輪を持つ惑星もあります。ウエスカ・プラネタリウムの「アクセス可能な宇宙」展示室では、表面の違いによってさまざまな天体を表現したモデルを見ることができます。金属製の支柱に支えられた惑星の表面には、クレーターや輪を思わせる凹凸のある、ざらざらとした質感が施されています。こうした形や質感を指先で確かめることで、太陽系の中でのそれぞれの惑星の大きさや立体感を感じることができます。

ピラール広場

広大な広場に立って目を閉じると、風が奏でる音に包まれるのを感じることができます。強い突風が石にぶつかっては笛のような音を立て、砕けるように散り、サラゴサのピラール広場の中心で絶え間ないささやきを生み出しています。

手前には、長方形の噴水の穏やかな水面が空の光を映し出し、明るい色の舗装の上を鳩たちが歩いています。その背後には、堂々としたレンガ造りの塔とバシリカのドームがそびえ立っています。広々とした開けた空間に、風の音が響き渡ります。シエルソと呼ばれる北西の風が、高くそびえる尖塔と、塔に施された幾何学模様の装飾の間を吹き抜けると、鋭く絶え間ない風切り音が響きます。そこに、水が奏でる低いせせらぎや鳥の羽ばたきが重なり、リズミカルな響きを生み出します。時に時速100キロメートルを超えるこの北西風は、エブロ川流域の低地を通り抜けながらその力を集中させ、サラゴサならではの音風景を形づくっています。

石造りの橋の手すり

橋の頑丈な石の手すりに寄りかかると、足元で水が脈打つ感覚が伝わってきます。サラゴサの中心を流れるエブロ川の水音が、絶え間ないかすかなささやきから、低く深い響きへと、その強さを変えていくのが感じられます。

エブロ川の水面には、アラゴン石橋が映し出されています。明るい色合いの石で造られた壮麗な橋が景色を大きく二分し、下には幅広いエブロ川の流れ、その奥にはピラール大聖堂の高い塔がそびえています。橋の手すりにもたれて耳を澄ますと、川の流れがこの景色の音を形づくっていることに気づくでしょう。水が橋脚にぶつかるたびに、絶え間ない水音が響きます。増水期には、その穏やかなせせらぎが低く重厚な響きへと変わり、石造りの橋まで震わせるように伝わります。一方、水量が減る時期には、穏やかでリズミカルな水音が聞こえてきます。サラゴサ最古のこの石橋は、600年以上にわたり、スペイン最大の流量を誇るエブロ川の上で響きを生み出し、その水量がもたらす力を音として伝えてきました。

サンタ・エングラシア教会

サンタ・エングラシア教会のファサードに指を滑らせると、彫刻が施されたアラバスターの滑らかさと、ざらざらとしたレンガの質感との対比を感じることができます。アラゴン州サラゴサの中心部でルネサンス様式の細部に触れることができる、触覚的な体験です。

澄み渡る青空の下、明るい色合いのアラバスターで彫刻された壮麗なルネサンス様式のファサードが、焼き色の濃いレンガ造りの重厚な壁に囲まれています。サラゴサのサンタ・エングラシア教会は、アラバスターとレンガを組み合わせた美しいファサードが特徴です。アラバスターは滑らかで磨き上げられた表面を呈しているのに対し、レンガは多孔質でざらざらしています。石には、壁龕や衣服のひだ、人物像などの彫刻が施され、壮大なファサードを形づくっています。

テルエルの生ハム

切りたてのハムを口に運べば、脂がゆっくりと溶けていき、繊細で甘い風味が広がります。その一口には、アラゴン州テルエルの石畳の酒場を吹き抜ける、冷たく乾燥した風の記憶が宿っています。

生ハム用ナイフの刃の上にのった薄切りのハムをクローズアップ。鮮やかな赤身に脂の細かな筋が入り、光を受けてつややかに輝いています。奥には、塊のままのハムがぼんやりと映っています。アラゴン地方のバルで口にすると、舌に触れた瞬間、脂がゆっくりと口の中で溶けていきます。塩味は控えめで、やさしい味わいの中に、ほのかな甘みとバターのようなコクが感じられ、余韻が喉に残ります。こうした味わいを生み出しているのが、テルエル県の冷涼で乾燥した気候です。天然の熟成庫ともいえる環境でじっくりと時間をかけた熟成が可能になり、こうした熟成が、白豚生ハムとしてスペイン初の原産地呼称の基盤となっています。

リェイダ旧大聖堂(セウ・ベリャ)の身廊に響く音

この敷地を歩くと、一歩ごとに石の静寂が破られるのが感じられます。靴音は澄んだ残響となって空間に広がり、壮大なリェイダのセウ・ベリャに、目には見えない音の地図を描いていきます。

大きな尖頭アーチと、精緻なゴシック様式の透かし彫りが施された窓が、装飾を抑えた広大な石造りの回廊を縁取っています。黄金色の陽光がアーチの柱の間から差し込み、床に細長い影を描きます。この空間を歩くと、広大な堂内そのものが耳を包み込むように感じられます。靴音や杖の音が床に響くと、澄んだ音が大きく広がりながら反響します。その音は重厚なヴォールトに跳ね返り、静かで密度のある空気の中を、数秒にわたって響き続けます。こうした独特の音響は、むき出しの壁面と、建物の圧倒的なスケールによって生まれています。かつての大聖堂は18世紀に軍事施設として使われ、その際に内部の装飾が失われて石造りの構造がむき出しになりました。それにより、リェイダのセウ・ベリャは、まるで巨大な「石の共鳴箱」のような空間へと姿を変えたのです。

リュウゼツラン

モンジュイックの丘を歩くと、濃厚で甘く、どこか酔いしれるような香りが辺りを包み込みます。これは、バルセロナのモッセン・コスタ・イ・ロベラ庭園の小道を歩くと感じられる、リュウゼツランの花が残す目には見えない香りの余韻です。

手前には、堂々としたリュウゼツランが群生し、淡い緑色の肉厚な葉を広げています。葉の先には鋭い棘があり、小さな匍匐性の植物が広がる地面の上に、ロゼット状に葉を重ねています。バルセロナにあるモッセン・コスタ・イ・ロベラ庭園では、濃厚で温かみのある甘い香りが空気を満たしています。花が咲く季節には、そよ風に蜜を思わせる甘い香りと草木の青々しい香りが重なり、近くの地中海から漂う潮の香りと混ざり合います。独特の微気候に恵まれたこの庭園には多種多様な多肉植物が集められています。何十年もかけてエネルギーを蓄え一度だけ花を咲かせる植物もあり、その花茎は高さ10メートルに達することもあります。そして、花を咲かせた後、枯れていきます。

グエル公園のベンチ

曲線を描く背もたれに手を滑らせると、滑らかな陶器の表面と、ひとつひとつのかけらをつなぐざらざらとした継ぎ目の、繰り返し現れる質感の違いを感じることができます。地中海の暖かな陽射しの下、バルセロナのグエル公園で楽しむ、曲線に沿った触覚の旅です。

青や緑、黄色の釉薬を施した不揃いな陶器のかけらが、青空の下、波打つ壁一面を彩っています。指先に触れるタイルの表面はガラス質で、陽射しを受けてほんのりと温かく感じられます。この身体に沿うように設計された背もたれをなぞると、滑らかでひんやりとした陶器のかけらと、それらをつなぐ粗いモルタルの継ぎ目との対照が、絶えず指先に伝わってきます。「トレンカディス」と呼ばれるこの技法は、アントニ・ガウディが、再利用した陶器のかけらを用いて曲面を彩るために取り入れたものです。バルセロナのグエル公園では、この波打つ構造が、人の身体の曲線に沿う、ひと続きの大きな造形として形づくられています。

サグラダ・ファミリア

サグラダ・ファミリアの柱身を抱きしめることは、自分の両腕で巨大な石の世界を包み込もうとすることです。冷たい石に身体を寄せると、バルセロナの中心で、途方もなく大きな重さを軽やかに支えている建築の壮大さが伝わってきます。

石造りの溝付きの柱が、まるで密集した森のように天井へと伸び、星形の幾何学模様を描くヴォールトの下で枝分かれしています。バルセロナのサグラダ・ファミリアの内部では、斑岩や花崗岩で造られた柱が、ひんやりとした滑らかで重厚な表面を見せています。柱は非常に太いため、両腕を回してもその全体を抱えることはできません。柱身の角はなめらかに磨かれ、その柱は高く伸びて、上部のヴォールトを支えています。アントニ・ガウディは、柱を木々のように見立て、建物にかかる荷重を基礎へと分散させる生体模倣の構造としてこの空間を設計しました。

カサ・デ・ラルディアカの亀の彫刻

石の甲羅にそっと触れると、指先から長い年月の重みが伝わってきます。うろこのような表面をなぞると、ざらざらとした壁面と、何千もの人の手に触れられて磨かれた大理石との対照を感じることができます。バルセロナのカサ・デ・ラルディアカに残る、今も息づく言い伝えのひとつです。

古い石壁には、彫刻が施された石造りの郵便受けが取り付けられています。郵便受けには、飛翔する5羽のツバメが刻まれ、周囲にはツタの葉が美しくあしらわれています。右下には、亀の姿がひっそりと添えられています。周囲の壁は、ざらざらとして多孔質で、触れるとひんやりとした石でできている一方、亀は滑らかに磨かれた大理石でできており、縁も丸みを帯びています。これらが一体となって、ファサードに溶け込むひとつの彫刻作品を形づくっています。この郵便受けは、建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーが風刺としてデザインしたものです。司法の迅速さを象徴するツバメに対し、亀は、官僚的な手続きの遅さを表しています。

エブロ川デルタ地帯自然公園

河口近くの小道を歩くと、潮の香りを含んだそよ風と、鮮やかな花々が放つ濃厚な香りがぶつかり合うように感じられます。深く息を吸い込めば、甘く草木を思わせる香りを含んだ湿った空気が、タラゴナのエブロ川デルタ地帯自然公園ならではの風景を包み込みます。

青空に白い雲が浮かぶ中、野生のスイセンが群生し、空へ向かって伸びています。緑の茎には、中央がオレンジ色の濃い黄色の花が咲きます。カタルーニャ州のエブロ川デルタ地帯自然公園では、風が複雑で濃厚な香りを運んできます。花びらの甘い香りに、スパイクラベンダーと野生のラベンダーの素朴な香り、さらに大地の湿り気と海の潮の香りが重なり合います。この自然公園はイベリア半島で最も広大な湿地帯のひとつで、淡水と海水が交わる環境が、豊かな固有植物の生育を支えています。

タラゴナ円形劇場

千年以上の時を刻む石造りの観客席に腰を下ろすと、地中海の絶え間ない波音と、風が運ぶ響きが溶け合って聞こえてきます。カタルーニャ州のタラゴナ円形劇場では、砂浜から打ち寄せる波がまるで拍手を送るように響き、リズミカルなシンフォニーを奏でています。

黄金色の石で造られた半円形の観客席が、中央の舞台へ向かって段状に広がっており、そのすぐそばでは、青く輝く地中海の波が古代遺跡のわずか数メートル先まで打ち寄せています。もともと大勢の観客の歓声を響かせるためにつくられた、この場所の自然な音響空間は、今では波の音を受け止めています。水が岩に絶え間なく打ち寄せる音は、低く途切れることのない響きとなって、古代の壁に反響します。海からの風は半円アーチの間をすり抜けるたびに高く口笛のような音を響かせ、岸辺で波が引いていくリズミカルな音との間に、際立った対比を生み出します。この場所は紀元2世紀末に建設されました。水辺からわずかな距離に位置していたため、タラゴナの円形劇場で行われた見世物に使う猛獣や重量のある資材を、直接陸揚げできるようになっていました。

ジローナのメズーザー

プラセタ・デ・リンスティトゥ・ベイの33番地にある石の枠に指を滑らせると、歴史と直接つながるような感覚を覚えます。石に刻まれた小さな溝を指先でたどることで、ジローナに残る、ヨーロッパで最も保存状態のよいユダヤ人地区の歴史を感じることができます。

光に照らされた厚みのある石のブロックの中央には、細長い縦の溝が刻まれています。その足元には、ヘブライ文字が記された小さな巻物と、筒状のケースが置かれています。プラセタ・デ・リンスティトゥ・ベイ33番地の扉では、壁の外側が何世紀もの時を経て風雨にさらされ、ざらざらとした質感になっている一方、中央の溝は摩擦によって滑らかに磨かれています。この溝は、扉の脇柱に彫り込まれたものです。ここには、ユダヤ人の家々の入口に取り付けられていた聖なる巻物「メズーザー」が納められていました。この痕跡は、ヨーロッパで最も保存状態のよいユダヤ人地区、ジローナの「エル・コール(Call)」の一部です。

エスペリデスの庭園のオレンジの木

さまざまな柑橘類が並ぶ庭園を歩けば、豊かな香りに導かれながら、季節の移ろいを感じることができます。酸味を思わせる爽やかな香りと甘い香りが空気の中で重なり、バレンシアのエスペリデスの庭園に、目には見えない生き生きとした香りの風景をつくり出しています。

オレンジの木に茂る濃い緑色の細長い葉の間から、つややかでざらりとした果皮を持つ、熟したオレンジが顔をのぞかせています。バレンシアのエスペリデスの庭園では、そよ風が果皮に含まれるエッセンシャルオイルを広げます。空気いっぱいに濃厚な柑橘の香りが漂い、果実の爽やかな香りに、葉が持つほろ苦い香りが重なります。庭園には50種類を超える柑橘類が植えられており、古典神話に登場する「黄金の林檎」にちなみ、バレンシア地方の豊かな農業文化と多彩な柑橘類の魅力を一度に感じられる場所です。

芸術科学都市のトレンカディス

芸術科学都市の曲線を描く造形に手を滑らせると、割れた陶器ならではの温度と不規則な質感が指先に伝わってきます。バレンシアを代表する前衛建築の壮大なスケールと、職人の手仕事を指先でつなぐ、触覚の旅です。

手前には、白くつややかな陶器の小さな不定形の破片で覆われた曲面の壁が広がり、澄んだ水をたたえた大きな池を縁取っています。見上げれば、雲ひとつない青空が広がっています。指先で触れると、トレンカディスの技法を感じ取ることができます。表面の凹凸は控えめですが、滑らかに磨かれたタイルの一枚一枚をつなぐ、ざらざらとした継ぎ目にはわずかなへこみがあります。手のひらを滑らせると、地中海の陽射しを受けた陶器が熱を蓄え、光の当たる角度によって異なる温もりが伝わってきます。曲面を覆うために生まれたこのモザイク技法は、バレンシアの芸術科学都市の建物を包み込み、陶器のウロコが連なるような一続きの表面をつくり出しています。また、独特の質感を生み出すだけでなく、海からの湿気から建物を守る役割も果たしています。

コレヒオ・デル・アルテ・マヨール

コレヒオ・デル・アルテ・マヨールに伝わる美しい織物に指を滑らせると、何世紀にもわたって受け継がれてきた織物の伝統を感じることができます。バレンシアの歴史ある絹織物を彩る花模様のブロケードには、生地の重みやしなやかな落ち感、そして細やかな凹凸が息づいています。

エメラルドグリーンの絹織物のクローズアップには、ピンクやオレンジ、金色の糸で密に刺繍された花模様が、立体的なパターンを描いています。コレヒオ・デル・アルテ・マヨールでこの作品に触れると、指先に伝わる質感の鮮やかなコントラストを感じられます。ベースとなる絹は、滑らかでひんやりとして、指がすっと滑るような手触りです。一方、幾重にも絡み合った糸による刺繍が、豊かな凹凸を生み出しています。生地を手に取ると、ずっしりとした重みと、形を保つ落ち感が伝わります。厚みのある織りが、簡単には折れ曲がらないほどの張りを生み出しています。こうした高度な織物技術は15世紀から受け継がれています。当時、絹の交易によって、バレンシアはヨーロッパ有数の商業都市として発展しました。エスポリンは現在でも、木製の織機で細かな手仕事を何週間も重ねて、ようやく数センチを織り上げるという手間のかかる織物です。

アルボラヤのオルチャータ

冷たい手作りオルチャータをひと口味わえば、その一杯から大地の恵みと受け継がれてきた伝統を感じることができます。クリーミーで甘いオルチャータに、ふんわりとしたファルトンを浸して味わえば、バレンシア県アルボラヤの夏の午後へと、たちまち誘われます。

グラスいっぱいに注がれた白く泡立つ飲み物に、細長く黄金色に焼き上げられたファルトンが添えられています。表面を覆う薄い砂糖のグレーズが、飲み物に触れると溶け始めます。昔ながらのオルチャテリアで最初のひと口を味わうと、ミルクのようになめらかで、ビロードのような口当たりがあり、ほんのり土を思わせる風味も感じられます。甘さの中には、ほのかなナッツのような香りと、湿った土や根を思わせるニュアンスがあり、ひと口ごとに味わいがさらに深まっていきます。また、オルチャータをたっぷり吸い込んだふんわりとしたファルトンの生地との対比も楽しめます。アルボラヤは、タイガーナッツ(チュファ)の産地として知られています。砂地で栽培されるこの塊茎から生まれたオルチャータは、バレンシア州を代表する伝統的な飲み物のひとつです。

スペイン遊歩道

スペイン遊歩道を歩けば、風に導かれるように足を運ぶひとときを楽しめます。耳を澄ますと独特の音が聞こえてきます。それは穏やかな葉擦れの音ではなく、アリカンテの海辺で、何千枚ものナツメヤシの葉が触れ合って生まれる、乾いたリズミカルな音です。

足元には、赤、クリーム色、濃い青の波模様を描く、何千枚もの小さな大理石のタイルで構成されたモザイクが広がっています。その上を歩いていると、海からのそよ風が、通り沿いに並ぶナツメヤシの木々の葉を揺らします。一般的な葉擦れのようなささやきではなく、風が吹くたびに、硬く尖った葉同士がこすれ合い、乾いたリズミカルな音を響かせます。この独特の音風景が、アリカンテのスペイン遊歩道を彩っています。400本を超えるナツメヤシが奏でる音と、地中海の波を表現した約650万枚のモザイクが、海辺ならではの景観をつくり出しているのです。

サンタ・クララ広場

歴史地区を歩くと、陽射しを浴びた石畳が放つ乾いた熱気と、湿り気を含んだ海風が広い通りを吹き抜ける感覚を、肌で感じることができます。乾いた暑さと海からの涼やかな風の対照的な感覚が、カステジョンのサンタ・クララ広場へと誘います。

日陰の石造りのアーチの向こうには、日当たりの良い広々とした広場が広がり、黄金色の外観とゴシック様式のファサード、四角い塔を備えた壮麗な共同大聖堂がそびえています。石畳は、何時間も陽射しを浴びて蓄えた熱を放っています。広場を歩いていくと、風が大通りを吹き抜け、数キロメートル先にある地中海から、湿り気と塩気を含んだ少しべたつく海風を運んできます。こうした平坦で開けた街並みがカステジョン・デ・ラ・プラナの特徴で、海からの風が、街の歴史ある広場の暑さをやわらげています。

ヒホーナ

手作りのトゥロンをひとかけら噛みしめると、はちみつの甘さと、香ばしく焼いたアーモンドのカリッとした食感が口いっぱいに広がります。アリカンテの甘いものの中心地、ヒホーナのバル通りを歩きながら味わう、伝統的な食文化が生み出す豊かな食感です。

不揃いな形に切り分けられた厚みのある硬いトゥロンが並び、白くしっかりとした生地の中には、丸ごとの香ばしいアーモンドが閉じ込められています。ヒホーナを代表するバル通りでは、ひと口かじるたびに、乾いた小気味よい音を立ててトゥロンが崩れます。口の中ではナッツの濃厚な風味が広がり、花のように甘く、余韻の長いはちみつの甘さと溶け合います。ほろりと崩れる結晶化した砂糖と、しっかりとしたアーモンドの食感が対比を生み、香ばしい風味が口いっぱいに広がります。この絶妙なバランスは、アリカンテ県で15世紀から磨き上げられてきたもので、トゥロンは今では、スペインのクリスマスを代表する伝統菓子のひとつとなっています。