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小麦を撫でる手

中部

スペイン中部を体感するとは、こういうことです。

黄金色に実った小麦が、かすかに音を立てる。野生のタイムと、古い石の香りが漂う。心を包み込むような広大な静けさと、力強く吹き抜ける風。活気に満ちた街と、静かな安らぎを感じる小さな一角。

クリスト・デ・ラ・ルス礼拝堂

鉄格子に指先を滑らせると、鍛造された鉄のひんやりとした感触と、ざらざらとした質感を感じることができます。トレドにあるクリスト・デ・ラ・ルス回教寺院を前に、職人たちの手仕事の技を指先で感じるひとときです。

手前に先端の尖った黒い鉄格子が立っている

アルバセテのパサヘ・デ・ロダレス

ロダレス回廊に足を踏み入れると、街の喧騒が別の音へと変わっていくのが感じられます。大きなガラス屋根が人々の会話や足音を受け止め、アルバセテを代表する回廊の優雅な天井の下に、柔らかく途切れのないざわめきを生み出します。

鉄とガラスでできた壮大な屋根から自然光が降り注ぎ、ファサードを明るく照らしている

カサ・デル・アルコ

カサ・デル・アルコのバルコニーの下で立ち止まると、機械仕掛けの鐘の音に合わせて、まるで時が止まったかのような感覚に包まれます。ゆっくりと人形が回転し、伝統的なメロディーがシウダ・レアルのマヨール広場を包み込みます。

白い文字盤の時計が鍛鉄のバルコニーの上に掲げられ、その両側には青銅製の鐘を並べた塔が立っている

サン・パブロ橋

サン・パブロ橋を歩くと、一歩ごとに木の板の不規則な凹凸と、足元の空間から伝わるかすかな揺れを感じます。クエンカのウエカル峡谷を渡りながら、途切れることなく続く触覚の旅です。

緑豊かな渓谷に、えんじ色の金属製の手すりと木の板張りの床を備えた長い橋が架かっている

ブリウエガ

ラベンダーが咲き誇る季節にレイ通りを歩けば、その香りを運ぶ風に包まれます。グアダラハラ県ブリウエガの華やかに飾られた通りを歩くと、花と草木の香りがあたり一面に漂っています。

黄土色のファサードを見上げると、傘で飾られた鍛鉄のバルコニーが並んでいる

レオン大聖堂

彫刻が施された木に指先を滑らせると、木目の筋とノミの跡が重なり合う「浮き彫りの物語」を読み解くような感覚を味わえます。レオン大聖堂の壮麗な扉に刻まれた、奥深い触覚の世界です。

精緻な幾何学模様と彫刻入りの方形パネルが施された、濃い色の大きな木製扉

サモラのアセイターダ

フランコス通りを歩くと、甘くアニスを思わせる香りが辺りを満たし、長く漂い続けているのを感じます。焼きたての生地の香りに導かれるように歴史地区を歩けば、サモラのパンと菓子づくりの中心へとたどり着きます。

明るい色の木の板の上には、素朴な見た目の黄金色のアセイターダがいくつも並んでいる

貝の家

貝の家のファサードに指を滑らせると、石の立体的な手触りを感じられます。彫り込まれた一つひとつの溝はざらざらとした質感を持ち、陽射しの熱を蓄えています。カスティージャ・イ・レオン州サラマンカを象徴するこの建物を、触れながら探っていくことができます。

黄金色の石壁には何十もの貝殻が浮き彫りで施されている

アビラの卵黄菓子

できたてのサンタ・テレサの卵黄菓子を口に運ぶと、薄い砂糖の膜がほろりと崩れ、その中から濃厚でなめらかな中身が現れます。アビラの街の中心で、何世紀にもわたる菓子づくりの伝統が凝縮された濃密な甘さを楽しめます。

砂糖のついた菓子職人の手が、円筒状の生地を小さなヘラで切り分けている

カンポ・グランデ

木々に囲まれた小道を歩けば、水の絶え間ないせせらぎを切り裂く、鳥たちの鋭く金属的な鳴き声に気づきます。バジャドリの歴史あるカンポ・グランデに足を踏み入れると、対照的な響きが織りなす音風景に包まれます。

横向きに立つクジャクが、胸元から首にかけて鮮やかなコバルトブルーの羽を見せている

パレンシアのマヨール通り

マヨール通りのアーケードの下を歩けば、建物に守られた空間に入った瞬間、気温がふっと和らぐのを感じます。パレンシアの中心部で柱にそっと触れると、指先で建築を読み解くように、ざらざらとした石から滑らかな鉄へと、異なる質感の移ろいを感じることができます。

明るい色の頑丈な石柱が一列に並び、アーケードを支えている

ソリアのトレスノ

トレスノを味わうと、絶妙な食感の対比を楽しめます。まず、ふっくらと膨らんだ皮がパリッと弾け、続いて塩味の効いた肉のジューシーな旨みが口の中でゆっくりとほどけていきます。カスティージャ・イ・レオン州ソリアの食文化を象徴する、まさにこの土地ならではのひと口です。

素朴な土鍋に、厚切りの揚げた豚バラ肉がたっぷりと盛られている

ブルゴス大聖堂

聖歌隊席の彫刻を指先でたどると、さまざまな質感を通して歴史を読み解くことができます。ブルゴス大聖堂では、ルネサンス期のクルミ材の磨かれた温かな手触りから、ゴシック様式の石のひんやりとした多孔質な手触りへと移り変わります。

手前には、暗い色合いのクルミ材に、子どもの姿や人々の顔が細やかに彫り込まれている

アラメダ遊歩道

アルカサルの足元に広がるアラメダ遊歩道を歩けば、まるで自然の音楽ホールに包まれるような感覚を味わえます。セゴビアの緑豊かな一角では、茂みの間を流れ続ける川のせせらぎに、数十羽もの鳥のさえずりが重なります。

石造りのアーチ越しに、静かな水をたたえた池が広がり、その奥にはセゴビアのアルカサルが佇んでいる

サンタ・マリア広場

広場の中央で立ち止まり、ストリートミュージシャンの奏でる音色に耳を澄ますと、建物の壮大さを耳で感じることができます。カセレスのサンタ・マリア広場では、花崗岩のファサードに音が反響し、まるで自然のアンプのように広場全体を包み込みます。

黄金色の石を積み上げた重厚な塔が、鐘楼とゴシック様式のアーチを備えた柱廊玄関とともに、共同司教座聖堂のファサードを堂々と彩っている

メリダのローマ劇場

メリダのローマ劇場の舞台中央に立つと、声が澄み渡ったまま、無理なく最後列の観客席まで届くのを感じることができます。これは、今日なおエクストレマドゥーラ州の中心で響き渡る、千年の歴史を持つ音響体験です。

夜の闇の中、舞台正面の壮大な大理石の柱がライトに照らされ、そびえ立っている

バダホスの城塞

城塞の城壁上を歩けば、指先で読み解くことのできる歴史に出会えます。陽射しを浴びた城壁に手を置くと、バダホスの城塞を形づくる特徴のひとつである、ざらざらとして温かく、土のぬくもりを感じる独特の質感が伝わってきます。

黄土色のアーチが、城壁に挟まれた通路を縁取っている

視覚障害者のための博物館

縮尺模型の上に指を滑らせれば、指先で、その建築の壮大さを感じ取れます。凹凸や曲線、質感に触れ、巨大な建築物の形を手で確かめる――。マドリードのONCE(オンセ)視覚障害者博物館ならではの没入型体験です。

手前にある半円形の模型の段状の表面を、複数の手が注意深く触れて確かめている

王立タペストリー工場

織りたてのタペストリーに触れると、一つひとつの結び目に歴史の重みを感じます。密に織られた羊毛と絹の織り目を手でなぞると、マドリードの王立タペストリー工場で今も受け継がれる、職人技による凹凸を感じ取ることができます。

熟練した手が、小さな金属製の道具を使って、ぴんと張られた縦糸に青い糸を結びつけている

レティーロのミュージシャン

これらの小道を歩けば、交通のざわめきに代わって弦楽器の音色が耳に届きます。メロディーが鳥のさえずりや葉の擦れる音と重なり合い、マドリードのレティーロ公園の中心に、穏やかな音に包まれた憩いの場を生み出していることが感じられます。

マドリードのレティーロ公園にある木々が並ぶ広い遊歩道で、ヴァイオリンを弾く2人とチェロを弾く1人の若者が一曲を演奏している

ラ・パルマ通り

夕暮れ時にラ・パルマ通りを歩くと、街の地下に脈打つ鼓動を感じます。店々が扉を開く前から、くぐもった和音やサウンドチェックの音が隙間から漏れ、マドリードのマラサーニャ地区にこれから訪れる音楽の熱気を予感させます。

でこぼこした石畳と歩道の大きな敷石が、街灯の光を受けて濡れて輝いている

チョコラテリア・サン・ヒネス

アレナル通り脇から延びる狭い路地に足を踏み入れると、冷たい空気が次第に濃密で暖かな空気へと変わっていくのを感じます。ローストしたカカオと揚げた生地の濃厚な香りに導かれるように進むと、マドリード中心部の歴史あるチョコラテリア・サン・ヒネスにたどり着きます。